歯周病とオーラルケア
最近、口内環境が全身に及ぼす影響がクローズアップされています。以前、NHKのためしてガッテンでも取り上げられていましたが、噛み合わせが人の姿勢を変えてしまうことが明らかになったり、口内に住む歯周病菌は、虫歯や歯周病だけに関わっているだけではなく、全身に関わる病気にも関連していることが様々な文献で発表されています。
そこで今回は、オーラルケアの基本とその雑学についてお話してみたいと思います。
歯周病とその原因について
歯周病とは、歯周組織に発生する疾患の総称のことです。
歯垢(しこう)が主な原因の一つである疾患が多いのですが、単に歯垢のみでなく、多くの複合的要因によって発生し、さらに歯垢が一切関係ない歯周疾患も多く存在しているのも事実です。歯周病のうち、歯肉に炎症が起こる病気を「歯肉炎」、他の歯周組織にまで炎症が起こっているものを「歯周炎」といい、これらが二大疾患となっています。「歯肉炎」は、歯周病になる手前の症状のことをといい、歯茎にのみ炎症が起きている状態です(歯を支える顎の骨には影響は及んでいません)。歯周ポケットにプラークが溜まり、プラークに潜む歯周病菌によって歯茎に炎症が起こります。「歯肉炎」がさらに悪化して、歯周ポケットと呼ばれるみぞができたり、歯を支える骨まで溶けたりすることを「歯周炎」(歯槽膿漏)といいます。
歯周組織は大きく分けると4つの組織からなっており、歯はこれらの組織に守られているため、歯周病になると種類の異なる細菌が出す毒素が歯茎から体内に侵入します。その結果、歯周組織が侵され、歯槽骨、歯根膜が溶かされてしまうと歯を支える事が出来なくなり、結果、歯周病の末期症状になると歯が抜け落ちてしまいます。
歯周病ができるまで
■歯周病ができる順番
細菌が歯の周囲に付着する
↓
細菌の出す毒素が歯茎から入り込む
↓
歯茎から出血や膿が出る
↓
歯の周囲の骨が溶ける
歯周病は人類史上最も感染者数の多い感染症とされ、ギネス・ワールド・レコーズに載っており、日本人の成人のうち約80%が歯周病(歯肉炎または歯周炎)にかかっているといわれています。
歯周病が怖いというかやっかいなところは、初期の段階ではほとんど自覚症状がないことで、自覚症状が出たときには既に歯周病がかなり進行している事が多いのが特徴的です。
自覚症状のチェックポイント
自覚症状のチェックポイント
●歯磨きなどで歯茎(歯肉)から出血する
●口臭がするようになった
●口の中がネバネバする
●歯ぐき(歯肉)が腫れている
●歯ぐき(歯肉)が赤、紫色になった
●歯ぐきなどから膿(うみ)が出る
●硬いものを噛むと痛い
●歯がグラグラする
●歯ぐきが下がって歯が長く見える
●歯と歯の間の隙間が大きくなり、物が挟まりやすくなった
歯周病は、口内のオーラルケアが最も大事で、歯周病菌を口内で繁殖させないようにすることが重要です。
歯周病につながりやすい3つの要素
1) 咬み合わせ
咬み合わせは歯に加わる力のバランスを変化させます。
歯の許容範囲以上の力は、歯周病を悪化させやすくなります。
2)歯ぎしり(プラキシズム)
就寝中の歯ぎしりは、歯により高い、力のストレスを加えます。
寝ている間に歯をペンチで挟んで揺すられるようなもので、歯と歯茎の境目が緩み歯周病を進行させやすくなります。
3)歯並び
歯並びが悪い場合、同じように歯磨きしても、磨き残しが生まれることが多く、歯周病リスクが高まります。
歯周病治療を行う場合、オーラルケアだけではなく、この3つの部分にも意識を向ける事が大事です。
その点については主治医の歯科医師にご相談ください。
女性と口内トラブル
女性の一生の中で、妊娠期は女性ホルモンの影響により、虫歯をはじめ口腔内にトラブルを起こしやすい時期です。
ご自身の口腔内疾患に加え、歯周病菌・菌産生の炎症物質は、早産・低体重児出産の危険リスクになったり、歯周病菌は母子感染により生まれてくるお子さんの歯周病菌罹患リスクを高めることとなります。
本来、妊娠以前より予防や治療はしておくべきであり、妊娠中の口腔疾患の多くは、きちんとした口腔管理ができていれば悪化することはありません。
それから最近、話題になっているのは口呼吸と鼻呼吸です。女性に多いリウマチの方を調べると口呼吸の方が多いことが分かっています。口呼吸を鼻呼吸に変えるだけで症状が緩和したという症例も多いようです。
詳しくは下記のクリニックの情報をご覧ください。
【関連情報】http://mirai-iryou.com/mc_rheumatism.html
女性だけではなく、歯周病は、心筋梗塞やバージャー病、肋間神経痛、三叉神経痛、糖尿病と密接な関係にあることが、ごく最近の研究で確認されています。心筋梗塞やバージャー病では、歯周病原因菌(ジンジバリス菌)が血小板に入り込み血栓を作り易くなることによって発症のリスクが高まります。また、糖尿病ではジンジバリス菌感染が分泌を促進する腫瘍壊死因子(TNF-α)によって糖尿病が増悪され、この糖尿病によって歯周病が増悪されるという負の連鎖が起こります。これは「歯周病菌連鎖」や「歯周病連鎖」と呼ばれています。
歯周病予防のためのオーラルケア
オーラルケアのポイントは下記の通りです。
1) 歯科医師や衛生士に自分にあった歯磨きを教えてもらう。
2) とにかく鏡の前で、一回5~10分は練習する。
3) 汚れの残っている部分を歯科医師や衛生士に確認してもらい、教えてもらう。
4) 汚れの残りやすい部分を意識して磨く。
5) デンタルフロスや口腔内洗浄機などを用いて、歯ブラシでは磨きにくいところを補う。
6) 1~3ヶ月はトレーニング期間だと思って継続的に行い、習慣を作る。
大事なポイントは「歯磨きだけでは不十分」だということです。
歯間や奥の部分はどうしても汚れが除去しにくいのでフロスや水流洗浄機をうまく活用することが大事だということですね。同時に、歯並びや噛み合わせをきちんと調整する事も、歯周予防に必要な要素だと言うこともわかります。
ある歯科の先生曰く、口内は肛門より汚いのだそうです。 (ちょっとショッキングな表現ですが。)
それは栄養価の高い食べ物を毎日食べて、その都度、歯磨きをしている人が少ないので、菌の繁殖が多いという理由があるようです。特に日本人はランチ時に歯磨きする事の習慣が少ないこと、デンタルフロスをあまり使わないことから虫歯や歯周病が多いそうです。
女性の場合、妊娠における歯のトラブル防止の意味においても、日常のケアがとても大切ですね。