ザクロカレッジ

「愛と性の果実」ザクロ

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日本人にはあまり馴染みがないかもしれませんが、”愛と性の果実” として古代より知られている「ザクロ」。
実は「ザクロ」の歴史は非常に長く、古代ギリシャ・エジプト・ペルシャでは "妙薬” として多くの人に利用され、珍重されていた果物だということはご存知ですか?
なぜ?「愛と性の果実」と呼ばれていたのか?

意外と知らない「ザクロ」の歴史をちょっとご紹介したいと思います。

なぜ?「ザクロ」が古代から珍重されてきたのか?

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旧約聖書や古代の医学書にも登場している「ザクロ」は、
5000年以上前から栽培されており、昔から "健康" や "美容" に良いとされ、多くの人が好んで食べていたようですが、「ザクロ」が古代から珍重されてきたのはなぜなのでしょうか?

”豊穣” のシンボル

種子が多いため "豊穣のシンボル" として、また種子自体は死んでも、そこから新しい芽を吹く事実を "復活" と "再生" に結びつけて、キリスト教では「ザクロ」を "再生" と "不死" に対する希望のシンボルとして考えるようになったようです。

"多産" "子孫繁栄" のシンボル

日本では、結納の時に "噛めば噛むほど味が出ることから、味のある仲のいい夫婦になって欲しい" という意味を込めて ”寿留女(するめ)” を、昆布の旺盛な繁殖力にちなんで、子孫繁栄の願いが込め、また 『よろこぶ』という意味も込められた縁起物として "子生婦(こんぶ)" を、また ”白髪になるくらいまでという長寿の願いと、麻のように強い "絆" で結ばれるという意味で、夫婦円満の願いを込めて "友白髪(ともしらが)” を送りますが、「ザクロ」の原産国イランでは、結納に「ザクロ」を送る習慣があるようです。
「ザクロ」は "多産"と "子孫繁栄" のシンボルとして、婚約した時に、男性から花嫁になる女性にザクロを送っている地方もあるのだそうです。

 ”縁起物”として

中国では、「ザクロ」が縁起物としてもてはやされてきた歴史があるようです。
実際に、中国の医薬書には、ザクロの花から葉、果実、根まで幅広く生薬として使われてきたことが記されていますが、それだけでなく、1つの果実の中にたくさんの実が詰まっていること、また1粒1粒に種があり、種子が多いことから "子孫繁栄" や "子宝" のシンボルとして、結婚式のおめでたい席には欠かせないものとなっているようです。
日本では、昔から五穀豊穣、家内安全、商売繁盛などを願って、玄関先にザクロの木を植えていた歴史もあり、縁起物としても「ザクロ」は贈り物などに利用されてきたようです。

知られざる「ザクロ」パワー

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「ザクロ」は、さまざまなシンボルとして古代から珍重されてきたわけですが、意外と「ザクロ」の知られざるパワーについてはご存知ない方も多いようです。
歴史を見てもわかるように、昔からさまざまな人々が「ザクロ」を好んで食べたきたようですが、その理由はいったいどこにあるのでしょうか?

古代ペルシャの伝統医学書

エラグ酸、クエン酸、ポリフェノール、ミネラル、ビタミン、カリウム、葉酸、鉄分など「ザクロ」に含まれる栄養価が高いことはもちろんですが、古代ペルシャ伝統医学の医学書には、ザクロが持つさまざまな効用が記されているようです。
いくつか例をあげると、女性のおりもの、産前、産後、産後の肥立ちが悪い時の滋養食、女性のヒステリー、便秘などをしやすい人の腸のバランスを整える、肌を白くする、ニキビ、吹き出物を改善する、男の性本能を増して強くする、精液を充実させるということなどが書かれています。
また古代ギリシャ医学では、血液が古くなって血液が汚れると病気になると考えられており、足のふくろはぎをわざと傷をつけて古い血を流して捨てるという習慣が今でもあり、イスラム教の祭日に現在でも儀式として行われているようです。
古い血を流して捨て、新しい血液を体内で作ることで自然治癒力を高めるという先人たちの知恵が、今でも習慣として色濃く残っているようです。

インドの医学書 "アーユルヴェーダ"

インドの最も古い医学書 "アーユルヴェーダ" にも「ザクロ」はダーディマとして書かれており、その中にもさまざまな記述があるようです。
例えば、出産予定2ヶ月前からザクロを少量の岩塩とともに食べると安産になるとか、消化を助け、食欲を増し、精神を爽やかにする食品であるとか、「ザクロ」をはじめ23種類もの植物を混合した「吉効酥」に金や宝石を入れグツグツと煮た「大吉効酥」は、”白髪を免れ、この世において300歳の寿を保つ" 貴重な薬として珍重されてきたようです。
「ザクロ」は、
"不老長寿" の薬として、また身体のあらゆる症状に対する万能薬としてインドの "アーユルヴェーダ" では扱われていたようです。

中国の医学書

昔の中国の医学書には、「ザクロ」の花や葉、果実、根のすべてが、さまざまな疾病に使われていたことが記載されています。
中国では、血液が汚れると病いが生じるという「瘀血(おけつ)」という概念があり、気・血・水の流れが滞ると痛みや病気が起こると考えられているようです。「血」はカラダを巡って栄養を与え、老廃物を排出しますが、その働きが滞ると、体に不調が起こったり、病気になったりするのだそうです。
実際「ザクロ」は、東洋医学で 体を "温める" 作用がある "陽性” の果物としても知られていますが、「ザクロ」の果実が、体を内側からポカポカと温めてくれるだけでなく、全身の血液の巡りも良くしてくれるとも言われています。

体だけでなく、心の健康にも役立つ?!

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「ザクロ」は、エラグ酸、クエン酸、ポリフェノール、ミネラル、ビタミン、カリウム、葉酸、鉄分など栄養も豊富で体に良いことは一般的によく知られていますが、脳の神経細胞から次の神経細胞へ情報伝達をしてくれる必須アミノ酸のグルタミン酸とアスパラギン酸なども含まれているのだそうです。
古代からザクロが二日酔い防止や、鎮痛作用、鎮静作用などの精神機能維持に目的でも使われていたのも、精神機能維持に重要なアミノ酸が含まれてるからのようですが、それ以外にも、閉経後のうつ病や不安感、落ち込んだ気分を改善する "抗うつ作用" などもあるのだそうです。
また、ザクロは植物でありながら、人間の生命の根元に働きかける性ホルモンを含んでいたり、殺菌作用や貧血予防、病後の体力回復、老化防止、肩こり解消、疲労回復などさまざまな不調を改善してくれるだけでなく、健康維持や美容にも役立てられてきたようです。

「ザクロ」の栽培に最も適している条件とは?!

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最近は、「ザクロ」の果実そのものの品種改良がどんどん進み、さまざまな種類の「ザクロ」が世界各地で栽培されていますが、良質の「ザクロ」を栽培するには、一定の条件が必要だと言われています。
「ザクロ」の原産地イランは、山と砂漠、海に囲まれた広大な地形の中に位置し、夏は気温が40度を超え、冬は零下10度を下回る過酷な気温差があり、特に冬の厳しい寒さに害虫が冬を越せないため、農薬を使う必要が全くないそうで、”農薬不使用” で「ザクロ」栽培が可能だということも、原産地イランで高品質の「ザクロ」が収穫できる最大の要因のようです。
日本でも「ザクロ」は北海道以外の温暖な地域、特に西日本や九州で栽培されているところもありますが、食用としてよりも花が美しいため、花を眺めて楽しむ観賞用として栽培されているようです。
原産地イランでは、「ザクロ」が採れる時期は、消化を助ける目的で、食後のデザートとして日常的に食べたり、葉を煎じて飲んだり、果汁を濃縮エキスとして保存し、季節を問わず、年中、習慣的に愛用しているようです。